情けないことに風邪をひいてしまった。こじらせては大変と早く下宿に帰って寝ることにする。
それにしても一人暮しの切なさを痛感するのはこういう時である。だいたい風邪のひき初めは卵酒でもひっかけて寝てしまえば治る、ということになっているのに冷蔵庫を開けてみると悲しいかなその卵がない。卵だけでなくそもそも殆ど物が入っていない。う〜ん、こういう食生活をしていれば体を壊すのも無理はないか、と妙に納得しつつ、仕方がない、温かい物ならいいだろうと熱い日本茶で我慢することにする。
お茶で体を温めてさあ寝よう、という段になって考える。とりあえず温かくして寝なくちゃいけない。よし、とことん着込んで寝ようと寝間着の上から半天を羽織り、二人分の掛け布団を掛けてその中に潜り込む。
……布団が重すぎてかえってしんどい。俺はあほか、と思いながら起き上がって掛け布団を一枚剥す、さあ寝ようと思って横になってしばらくして炬燵の電気を切ってないのを思い出しごそごそ這い出してスイッチを切る、やれやれと思いながら布団にはいる。やっと寝ついたという頃に電話のベルがなる。いったい誰や、人が苦しんどるのに……と思いながら受話器をとるとこれが間違い電話だったりする。いい加減にせーよと怒っていると隣人が帰ってきて大きい音をさせながらファミコンを始める。電子音がうずく頭にひびきわたる……
文明の利器なんて大嫌いだ〜。 (1992年夏頃)
※ この文章は,学生時代に
ミニコミ誌『みどりむし』にコラムとして書いたものです。